ライブ終了後、言い訳のしようの無い後ろめたさを抱え、結局どのように詫びさせてもらうかの結論も出ないままに、Tさんとヨーコさんのもとへ・・・。

　そして、驚いた。　

　「お疲れさま・・・」と笑顔で迎えてくれた。

　オレは瞬時に

「あ〜、良かった〜。"解散"というオレらの出した結論を受け止めてくれはったんや〜」、と胸をなで下ろし、

　ホッとしながら

「ずっと続けるっていう約束、守れんですみませんでした・・・」と続けた。

　そして少し悪戯な笑みで

「もし約束守れんかった時の約束、覚えてる〜」とヨーコさん。　

　オレも笑顔で

「覚えてますよー。どうぞ煮るなり焼くなりぶん殴るなり、好きにして下さい・・・」と言い、

　ヨーコさんの正面に気をつけの姿勢で立ち、目を閉じて見せた。

　バシーッ・・・!!。　

　それは夢から醒めさせるような１発だった。

　それまでの笑顔でのジョーク交じりとも言えるやりとりとは、あまりにもミスマッチな渾身のビンタの痛みがオレの頬をつらぬいた。

　笑顔のヨーコさんに、ホッとして油断しきっていたオレは、事態をのみ込むのに少し時間がかかった。

　そしておそるおそる目を開けてみた。　

　ほんの数秒前の目を閉じる前のヨーコさんとは全く別の表情をしたヨーコさんがいた。

　その顔はさっきまでの優しい笑顔なんかじゃなく、

　溢れ出る涙をこらえきれず、大粒の涙をボロボロと流しながらも、唇を真一文字に噛み締めて、しっかりとオレを見据える、

　いや、この時のオレにはにらみつけられているようにも感じたヨーコさんがいた。　

　そして

「約束したのに・・・」とつぶやいて、泣き崩れ、Tさんに抱えられた。

　オレはとてつもなく悔しかった。そして自分自身に腹が立った。

　笑顔で迎えてくれたヨーコさんに対し、一瞬でも胸をなでおろし、あの約束を無かった事にしてもえたかのように思った自分に・・・・。

　そして、

　これからはメンバーそれぞれ別々の道を行く事になるけれど、変わらずにメンバー同士は友達でいる事と、

　それぞれの場で音楽活動は続けて行くので・・・、としか言えないオレ達に、

　泣きながらも、「これからも皆を応援していくから・・」と　最後には笑顔で会場を後にしたヨーコさん。

　けど、渾身の力をこめて、オレにビンタをくれたのが"本心"だって事くらい、オレらもわかってた・・・。