解散から復活までの3年半もの月日は予想以上に、様々な変化をもたらしていて、復活以降、かなりの苦戦をしいられた。
以前ずっとライブに足を運んでくれていたファンの人達の多くの10代〜20代前半の歳の人達は、この3年以上の間に学生から社会人になっていたり、家庭をもつようになっていたり、仕事の関係で遠くに行ってしまっていたり、と すっかり環境が変わってしまった人が多く、
アルバムは買って聴いてくれているようだったが、変わらずライブハウスに足を運べるライフサイクルの人は解散前よりも驚く程減っていた。
さらに、解散前、プロモーション活動のキモになっていた大阪ミナミ・アメリカ村の中心にある三角公園での路上ライブが 騒音問題等でまったくやらせてもらえなくなっていたのが最も大きな痛手だった。
しかし、商業的には苦戦をしいられているが、充実していた。
解散という出来事が、人間的にも音楽的にも成長させていた為、
創作活動、ライブ活動共、むしろ人気のあった解散前よりもはるかに、内容的にはすごくいいものが出来てきていた。
本当に唯一無二のロックンロール・バンドここに有り!!、と思えた。
もうこのままずっとやっていけると思っていた。
けれど、3年半の月日が変えたものは、オーディエンスや、バンド活動を取り巻く環境だけじゃなかったようだ。
メンバーのプライベートを取り巻く環境も変化していた。
メンバーそれぞれ家庭を持ち家族が増えてゆく。
当然、オレ達売れないロックンローラーでは決して満足にやしなってやれない。
経済的問題を含め、普通に普通の仕事をして暮らしているのなら起こりえない問題がどんどん発生してくる。
そこで、家族とどう向き合いながらやっていくのか・・・・。
ロックンローラーとして、
夫として、
父親として、のバランス。
それがズレ始め出していた。
オレはどんな事よりも"BCG ROCKERS"、"愚図"としての活動を最優先させてきたし、メンバーにもそれを徹底させてきたつもりだった。
それは、ギャラやCD、物販の売り上げなんて、売れていないインディーズ・バンドの収入なんて、ホント微々たるもんで、
たとえそれだけで食っていけていないにしろ、お金をもらってやってる以上、当然の事だ。
オレ達の一番の本職はロックンロールでなければならないはずだ。
食う為にやってるアルバイトは片手間でやる事だ。
誰だって金は欲しい。少しでも裕福な暮らしはしたい。
時と場合によっては、家族や生活の事を考えると、金にならないバンドの活動より、確実に金になるアルバイトや仕事を優先させてしまいそうになる事はある・・・。
家族の為に働き、生きる事はカッコ悪い事じゃ無い。素敵な事だ。
けど、オレ達のような「志(こころざし)」を持って目標に向かっている道のりのまだ途中にいる人間は、まだ立ち止まったり、守りに入ったり、あまり多くを手に入れようとしたり、望んだりしてちゃダメなんだ。
そんな姿勢を理解してくれて協力してくれる人となら、家庭を持つ事は良い事だ。
けど、事情はどうあれ
「カミさんが・・・」、
「子供が・・・」、
「仕事(バイト)が・・・」
という言い訳をバンド内に持ち込んでくるのなら、ロックンローラーなんてやめちまった方がいい。
本当に弱肉強食で浮き沈みの激しいシビアな厳しい世界だ。
いっぱしのロッカーになって、それだけで充分暮らしていけるようになるまでは、そんな甘っちょろい事を言っているようじゃ、途端に負けちまう。
どうするべきか・・・、の選択の場面での優先順位の1番は常に"BCG ROCKERS"である。
ただそれだけの事なんだが、
実際に常にそうつっぱり続けてゆくのは確かに簡単な事ではないが・・・。
そしてその辺りの姿勢の「ゆるみ」というか、「ズレ」を少し感じ取れ出した時、
リーダーのオレは、少しそれをたしなめた。
いつものように皆、思い直して、再びふんどしをシメ直してやっていけると思っていたオレには、
予測しなかった展開が起こった。
2人は今まで通り、受け止めてくれたのだが、
前ベーシストのTAISHOが、メンバーへの連絡は無いままに、これから先の"BCG ROCKERS"の活動をボイコットする宣言を、HP上の掲示板(bbs)に書き記した。
書き込まれたのと同時に、オレはすぐに気づき、ファンの人達が集う掲示板だけに、混乱を避ける為にサイト上からはすぐに削除した。
そして、その後日のリハーサルも、
その週の大阪城公園での路上ライブも、
予告通り、何の連絡も無く姿を現す事はなかった。
確かにそれまでにも、メンバー内で色んな事に対する「姿勢」や「価値観」等で、一番「ズレ」を感じていたメンバーでもあり、他のメンバーとの行き違いも多い男だった。
けどオレ達は長年一緒にやってきたファミリーだ。
不器用だったが、やさしい男気のある男だったし、「これが"男ロックンロール!!"」というベースを弾かせたら、抜群のセンスをもっていた。
どんな苦難も、衝突しながらも乗り越えていけると信じていた。
本当にオレは、一生つき合ってゆく男だと思っていた。
しかし、オレは残ったメンバー達とも十分に話し合ったが、
今回の一件に関しては「許してはいけない」事だと判断した。
ヨーコさんへの思いを込めて、再び動き出したはずなのに、
ヨーコさんとの約束のひとつ「メンバーずっとみんな仲良しで・・・」という約束を破る事になってしまう。
それはメンバー全員、重々承知していた。
けれど、ヨーコさんの事を思えば余計に、
"BCG ROCKERS"を止めてしまい、不協和音でガタつかせてしまうような行動は許されるべき事では無かった。
それと、メンバーに断わりも無く、というより、メンバーに伝えるよりも先に、
ファンの人達の集まってくれる掲示板に、一方的にボイコット宣言をした事。
これはやはりルール違反で、あまりにも、メンバーとファンを侮辱したやり方だとオレ達は感じた。
それでも、オレ達は仲間を信じて、ボイコット宣言した直後のスタジオリハーサル、ストリートライブ現場と、
「思い直して来てくれ・・・」
と メンバー全員同じ思いで本当の最後の決断を下すのを待ったのだが、
その思いは届かなかった。
そして、これから先もずっと続いてゆき、さらに過酷になってゆくだろうオレ達のこれからの道のりを考え、
やめてもらう決断を下した。
そのオレ達の決断を伝えたのもメールで、その決断以降の返信も無く、
結局ボイコット宣言以降、1度も会えなかった。
10年以上、本当の家族よりも密に、どんな友達よりも深くつき合い、向き合って一緒に歩んできた同志とのあっけない「別れ」に、
本当にやりきれない思いと、さみしさと悲しさでいっぱいになった出来事だった。
この問題に関して最後に・・・
ボイコットをした事に関しては、どんな言い訳をしたところで、確かにTAISHOが悪い。
けれど、TAISHOがボイコットをしてしまうきっかけになった、バンド内での「姿勢」「価値観」等の「ズレ」に関する問題に関しては、決してTAISHOが悪いという訳ではない。
その善悪はオレ達メンバーだけの間で決める事で、オレ達の「やり方」の上のみで起こった事で、人間的に間違った事をしたから・・・じゃない。
"BCG ROCKERS"のメンバーとしては・・・という見地から「NO」となっただけで、
TAISHOの1人の「男」として、「ベーシスト」として、「ロッカー」として、の「生きざま」「人間性」を否定する気はまったく無い・・・。
そう、本当に ただ、"BCG ROCKERS"のメンバーとしては一緒に歩んでいけなくなっただけの話だ。
この脱退に関する一連の流れは、苦い思い出だけれど、恨みつらみはまったく無い。
お互い、いつか笑いながら一緒にやってた頃の話を出来る日がくれば・・・。
TAISHOとオレ達の間で、どっちの「やり方」が正しかったかなんて、今となればもうどうでも良い事なんだろうけど、
今度どっかで会った時に、カッコいいロックンロールをやってる方が、たぶん正解なのだろう・・・。